【GPT5】サンドボックスが突破口になった:RTCM GLONASS SSRパース成功までの1か月

はじめに

RTCM(Radio Technical Commission for Maritime Services)形式のデータ解析は、GNSS技術者にとって長年の壁でした。
特に GLONASS 系 SSR(State Space Representation)は仕様が複雑で、bit単位の誤りが1つでもあれば結果が崩壊します。

はじめに

私もこの壁に直面し、GPTを使って自動化を試みましたが――最初は Heuristic エラー(推測処理)に悩まされ、正確なパースに到達できませんでした。

「もう無理かもしれない」と思った矢先、GPTから提案されたのが サンドボックス実行環境 でした。
※参考資料
①MADOCA 仕様書
https://ssl.tksc.jaxa.jp/madoca/public/doc/Interface_Specification_B_ja.pdf
②MADOCA LIB 説明
https://github.com/QZSS-Strategy-Office/madocalib/blob/main/MADOCALIB_manual_ver005.pdf

③RTKLIBソース
RTCM3のビット配置などはソースを参考にGPTがテンプレートを作成した。テンプレートはcommon (GPS,GALILEO,BEIDOU) Glonassの2個
RTCM-SSR_template_csv.v20251011.master_common
RTCM-SSR_template_csv.v20251011.master_glonass

common
MT1057・1058 MT1240・1241 MT1258・1259
Glonass
MT1063・1064

サンドボックスとは

サンドボックスは、コードを安全・再現可能に実行するための隔離環境です。GPTが自身でデバッグしてバグを解析できるGPT内環境です。
時間やメモリを自動制御し、失敗しても他の処理に影響を与えません。

GNSSやRTCMのように「bit単位の構造を厳密に扱う」処理において、サンドボックスは次のような強みを持ちます。

  • 🔒 安全性:未知のバイナリでも安全に試せる

  • 🔁 再現性:毎回同じ条件で実行・検証できる

  • 🚦 制御性:タイムアウトやメモリ制限を自動適用

  • 🧩 デバッグ性:途中出力・ログをその場で確認可能

これが「厳密さを求めるGNSS解析」と相性抜群でした。

1か月間の停滞と突破

当初、GLONASS SSR(RTCM MT1063/1064)のパースは、
テンプレCSVの構造を守っても符号やスケールが一致せず、1か月以上進みませんでした。

GPTに何度も相談しましたが、ヒューリスティック(推測)に頼る生成では正しい結果が出ません。
私は 「STRICT/fail-closed」 モードを要求し、GPTはそれに応えて サンドボックス実行で厳密検証する方式 を提案してくれました。

その瞬間から状況が変わりました。

  • CRC・IOD・符号・LSB すべて自動検証

  • 失敗時は即停止し、ログとともに再現可能

  • 正常ケースは CSV 出力+統計+スループット付き

結果、GLONASS SSRのパースが完全に成功。
「できないと思っていたもの」が、一夜にして再現性ある仕組みとして動き出しました。

実際の成果

出力された CSV の一部を示します。

gnss,prn,gpst_week,gpst_sod,iod_ssr,dRadial_m,dAlong_m,dCross_m,dClock_m,update_interval_s
R05,2281,23400,17,-0.0256,0.0128,-0.0064,0.0032,60

衛星R05の軌道・時計補正が、MT1063と1064のペアで整合。
手動検証しても LSB, 符号, IOD がすべて一致し、RTCM標準(10403.3 Annex N/O)通りの結果になりました。

なぜサンドボックスが効いたのか

RTCM解析では「ヒューリスティック(推測)」を排除しなければ正答にたどり着けません。
サンドボックスでは実行環境が完全固定され、
“仮説で走らない”=“検証しか通らない” 状態を作り出せます。

これは、開発者が失敗を恐れず試行錯誤できる「信頼できる試験場」そのものでした。


今後の展開

今回の成功で、SSRパースの他の系統(GPS 1057/1058、Galileo 1240/1241、BeiDou 1258/1259)にも同じアプローチを適用可能になりました。
次の目標は、SSR補正をエフェメリスに統合し、SP3生成まで自動化することです。


まとめ

GLONASS SSRパースを断念しかけた私を救ったのは、「AIの助言」ではなく「検証の仕組み」でした。
サンドボックスという仕組みが、GPTとの協働を安全で正確なものに変えたのです。

今後もこの環境を軸に、GNSS解析の壁を一つずつ越えていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です