【STA24】3Dプリント防水ケースその12<防水ケース完成_備忘録>

2次試作着手から2週間で何とか、完成しました。
●1次2次試作でノウハウを得たので、ノウハウを備忘録しておきます。(1月29日記録)
=>3Dプリント造形物の防水加工は、根気と手間と時間が必要なので、暇なときしかできません。日単位で作業が進むので、1か月単位で進捗していくのが普通です。私は、6か月かけて防水処理方法開発しました。
作業内訳は、{造形終了、初期重量測定=>防水剤塗布1層目=>乾燥4-8時間=>防水剤塗布2回目=>乾燥4-8時間=>最終重量測定=>水漬け試験=>重量測定=>重量0.2g以上増えていたらNGなので、乾燥させて塗布やり直し=>最初へ戻る}

ノウハウ1:造形物の吸水
3D造形物はスポンジみたいなもので、水に触れると毛管現象で吸水します。一旦水漬け試験をすると目に見えない水分が造形物中にたっぷり吸水されています。それを知らないで、水漬け試験を繰り返していると、何が何だかわからなくなります。
=>造形仕上がった段階とか防水塗装乾燥後の段階で、乾燥重量を0.1g単位で測定して、それを基準にして、水漬け試験をしないといけません。一旦吸水させてしまったら、ストーブとかドライヤーで温めますが、
<PLAは、40-60℃で軟化してしまうので、30℃以下で乾燥させないと造形物が変形してしまうんで
自然乾燥がベストですが、時間がかかるので、低温のドライヤー乾燥がいいです>
<万一乾燥で反ってしまったら、オーブントースターで80℃で5分ほど加熱すると治る場合もあります>
乾燥重量になるまで水分を蒸発させるまで次の試験はできません。(一度吸水させると二度と元に戻らない場合もあります)
=>吸水がわずかでもあると、時間とともに、水が浸透してきますので、水漬け試験は、時間毎に重量を測定しながら、変化を追っていく必要があります。だいたい15分単位で、測定して、乾燥重量と0.2g程度の差で1時間耐えれば、試験合格としてます。0.5gでも増えるようなら、数時間後には、大量に水が浸入してます
=>乾燥重量で管理しておくと、コート剤の塗装むらで、水が吸水されたのかもわかるので、0.1gで管理できるキッチンスケールは、重要なツールです。
ノウハウ2:コート剤塗布
現在のベスト塗布剤は、木材用アサヒペン水性外用ニス半つや透明を刷毛塗りする方法です。スプレーでは、塗りムラができて失敗しました。広い面は、刷毛でベタ塗りして、細かなシール構造部、ねじ穴などは、綿棒で、丁寧にこすりながら、下地に塗液を染み込ませていきます。水性だと臭いがほとんどしないので、室内で近くで目視しながら塗れます。
パジコの水性防水剤は、樹脂が柔らかく、使っているうちに剥げてしまいますし、速乾性が悪いです。
アサヒペンの水性屋外用のニスは、速乾性も2-4時間で表面が固くさらさらになります。耐久性もありそうです。
最低2回塗りします。4時間乾燥して2回目をぬって、12時間以上乾燥させて、翌日水漬け試験ができます。
ノウハウ3:四角形ゴムシール
四角形ゴムシールは、ゴムシートから手作りでカットします。寸法が不均一でも、かまぼこ型の溝形状ならシールできます。コツは、溝より細くカットして、しっかりと溝に収まるようにして、かまぼこの頂点に圧力がかかるようにすることです。
ノウハウ4:溝シール構造造形
0.2mmレイヤーでは、粗いので、0.1mm以下のレイヤーで、細密な形状を作らないと凹凸が残って
水漏れします。造形物全体を0.1mmで造形すると、40時間とかとんでもない時間がかかるので、
マルチプロセス(可変プロセス)機能<Simplify3Dの機能>を使って、精度が要らない部分は、0.25~0.3mmレイヤーで造形して、精度のいるシール構造部は、0.1mmレイヤ以下できれいに仕上げるのがコツです

ノウハウ5:シール部は、ネジ締めトルクで変形するので、分厚く頑丈に作ること
私のケースのシール部は、肉厚10ミリで、アクリル板5mmのフタ、M4の六角穴ボルト目いっぱいのトルクで締め付けて、何とか防水シールの機能を果たしてます。少しでもボルトの締め付けが緩いと漏れます。

ノウハウ6:フタは、平滑な板材が必須です。
フタは、デフォルトで5mm厚さのアクリル板を使ってますが、アクリルでなくてもアルミ板3mm厚など平滑面が
確保できる板材なら大丈夫で、剛性と強度がいるので薄板は向きません。何故、平滑板が必要かは、
シールゴムが3DP側は、溝部はかまぼこ断面にしてますが、フタも3DPにするとゴムが拡がらないので
水漏れしやすくなります。溝側は、3DPフタ側は、平滑板材というルールで製作することあが重要。

※2024年11月追記 3Dプリント造形ケース2年目を迎えて、チューブ形状での防水構造を開発してます。
新たに気づいた点をメモしておきます。
①円形状の場合ゴムシールは、Oリングをつかいますが、潰し代が1.5ミリ以上必要なので、径3-4ミリの太いOリングがよいです。
②Oリングの溝は、円形状で、深さは、半径+0.3~0.5mmのもので、Oリングをはめ込むj形状にします
③溝側は3DP造形でよいですが、押すフタ側は、完全平滑面が必要なので、アクリル厚板とかアルミ板3mm以上が必要。
④シールを圧着するため、大きな力がかかるので、小面積でも、ねじのフランジは厚さ10mm以上を確保すること

●二次試作の水漏れ試験結果
方法:15分、30分、60分と3水準で、初期重量と水漬け後重量の差を測定
判定;前後の重量差が0.2g以下ならOK。
条件:水深7cm(錘で沈めた状態での水深)、横置き

水漬け時間 15分 30分 60分
投入前重量g 213.1 213.3 213.4
水漬け後重量g 213.3 213.4 213.6

結果:60分でも0.2g程度しか増加してないので、浸水は微量でOKと判定。

※水漬けとりだしたら、タオルとティッシュペーパーで根気よく水分を拭き取らないのと0.2g程度は水分残りで、変わります。

●用意する物

①造形で使った物:
PLAフィラメント200g以上、3Dプリンタ(昔のEnder2)、スライサ Simplify3D ver4
アクリル板5ミリ(はざい屋調達) シリコンゴム2ミリ(アマゾン)
穴あけ工具、大き目のカッター、彫刻刀
②防水塗料
アサヒペン水性屋外用ニス 300ml 半ツヤ透明

刷毛(小さいもの2cmくらい)、綿棒多数

③試験
キッチンスケールー 0.1g精度  500gレンジ
水槽(造形物全体が縦置き、横置きで10cm深さで漬けられる大きさ)

●製作過程
①3Dデータは、Fusion360で設計
シール部構造は、10ミリ厚さで大きなネジ締めトルクに耐えるよにしてます。5ミリではダメでした
シール部かまぼこ型形状は、レイヤ0.1mmで造形しなければ、凹凸がとれなくて水漏れします。

 ②スライサー
Simplify3D Ver4です。可変プロセス機能があるので、造形物の高さの範囲をわけて、積層条件を変更できます。今回は、全高110ミリのうち105ミリまでレイヤー0.25mm 105-110ミリ区間を
レイヤー0.1mmで精密な造形で、かまぼこ型形状を造形してあります。

③塗装と乾燥
造形終了したら、サポートを剥がして、初期重量を測定して記録しておきます。
刷毛で、水性ニスを厚塗りします。細かなネジ穴、シール部は、綿棒で丁寧に塗って、下地にニスを
しみこませます。3D造形物は、スポンジと同様にどんどん水を吸いますので、吸い込み具合をみながら塗っていきます。1回目が終わったら、乾燥させます。4時間程度ですが、ストーブの前に置くと、1時間で乾燥しましたが、(熱で反ってしまって、使えなくなってしまったので、直接熱風をあてないほうがいいです)
万一乾燥で反ってしまったら、オーブントースターに入れて、80℃5分くらいで元に戻る場合もあります。
表面がさらさらになったら、2回目も塗ります。
パジコの防水剤は、べとべとで軟かくて乾燥が遅いですが、アサヒペンの水性ニスは、さらさらで速く乾きます。メーカーの技術力の差だと思います。

④水漬け試験初期
4-1:2回目塗り終わったら、12時間ほど室内乾燥させて、重量を測定して0.1g単位で記録します。
4-2:シール部のみの防水性確認
7ミリ深さで、アクリルフタが水で埋まる程度まで水をいれて、シールゴム部だけ水漬けします。
これで、15分漬けて、重量変化と、目視でシール部内部にわずかな水膜でも入ってないことを確認。
4-3:半分だけ水漬け
初期重量を測定して、横に倒して半分だけ水漬けします。
こうすることで万一水漏れした場合は、疑わしいのが水につかった半分であることが判ります。

4-4:残り半部水漬け
よく拭き取って、初期重量測定して、残りの半分を水漬け15分して、水漏れを確認
4-5:全体水漬け 7cm深さ
初期重量測定ー>15分水漬けー>取り出してよく拭き取って重量測定
ー>30分水漬けー>取り出してよく拭き取って重量測定
ー>60分水漬けー>取り出してよく拭き取って重量測定
4-6結果判定
4-5の15分開始前の初期重量と60分後の重量差が0.2g以内なら合格

 

はまった点

はまり1:塗装後乾燥を早めるためにストーブの前に置いておいたら、シール部が大変形して、ネジピッチが2ミリもずれて、水平面もでなくなって、ダメになった。

対策1:オーブントースターにいれて、80℃5分を3回ほど繰り返したら、元に近い状態に戻った。
対策2:アクリルフタでネジ締めして、12時間放置して、平面を戻した。

はまり2:シール部にニスを塗ってなかったので、シール部に水が微量浸透していた。
現象:シール部はゴムがあるし、微細な造形なので、ニスをさけていたが、そこから、わずかずつ水が
浸み込んでいたので、30分以上漬けると0.5g以上浸み込んでいた。目にはみえない水分だが
1時間水漬けすると、目に見えるまで内部に浸透してきていた。
対策:シール部も全部ニスを2回塗りして、塗りながら、かまぼ溝は綿棒でふきとって、溜まらないように塗る

 

●感想
1:朝日ペン 木材用屋外水性ニスが大成功でした。山勘で、アマゾンで購入したの当たって良かったです。
溶剤ニスでは、臭いがひどくて、丁寧な塗装作業ができないので、水性で丁寧に時間をかけて塗ったほうが
結果がよいです。

2:3D造形物は、スポンジと同じですので、1ミリでも水に接触すると水が浸透するので。刷毛と綿棒で
全体を完璧に塗り固めることが必須です。少しでもぬかると水漏れが発生します。

3:造形物はできるだけ小さく、反りにくい形状がよいです。

 

 

 

 

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