【STA25】カービングスキーの原理 論文読む4<TOPとTAILのSKID角重要>

4回目でラストになりました。この3年間意味を知らずにズレ角として計測していたデータに重要な意味があることが分かったので、大きな進歩が得られて、この論文と論文をくださった小賀坂スキーの横田様に感謝です。
●用語の使い方
今までSKID角(ズレ角、横滑り角)と呼んでましたが、論文では、TOP-CENTERのSKID角をAttack角(迎え角)CENTER-TAILのSKID角をLocal Attack角(局所的迎え角)と呼んでいる。
 そこで、本開発では、TOPの迎え角、TAILのSKID角と呼ぶことにする。
TAILのAttack角を迎え角と訳すのがピンとこないので、SKID角とした。
実際の角度の計測は、GPSのheadMot(速度ベクトルの方向角)と板のHeading角との差をSKID角としています。論文では、カメラで撮影した画像を解析して、角度を抽出していますが、大変な手間をかけてます。未だ、RTK技術が小型のチップ化されてない時代の論文ですので、当時は
このような計測技術が無かったから大変だったと思います。

●理解したこと
①カービングスキーは、サイドカーブに従ったターン弧をえがく。
大きは、サイドカーブRscと角付け角ΘのcosΘに比例する。(Θ>45度以上で式は実際のデータと合う)

②カービングターンの作り方は、スキーの前部で迎え角(AttackAngle)を発生させて、方向付けをしながらスキー後部で、カービングの弧を作っていく。スキー全体のSKID角と前部の迎え角(Attack Angle)と後部のSKID角が異なるということが分かった。
 =>今までの私の計測は、スキー前部と後部のアンテナ間の位置ズレを計測していたのですが、これではスキー全体のSKID角しか得られないので、STA25からは、前部と後部独立したSKID角計測を行います。
 そのために、MovingBaseを2セットに増やして、ブーツ部のアンテナをBASEアンテナとして、前と後のアンテナをROVERとして前後で2ROVER方式のMovingBasesシステムとします。

③カービングの定量値
SKIDDINGターン:迎え角15度以上の場合はSKIDDINGターン
カービングターン:迎え角8度以下 後部SKID角が2-5度になるとカービングの開始が始まる
=>これは、ここ3年での計測データでも、SKID角が10度以下でないと、カービングになってない判定をしてました。私のターンは、だいたい20度くらいSKID角が常に発生しているターンなので、滅多にカービングデータがとれないので、STA25ではプロ級のスキーヤーにテストライドしていただいてよいデータとります。

——以下 論文記事抜粋—————————

カービングとスキッディング
10m コースでは主にターンの最初の部分で若干の横滑りが見られたが、10m コースの平均最
大迎え角は 15 度、13m コースの平均最大迎え角は 12 度でした。しかし、この調査を典型
的な競技コンディションで観察されるものと比較した場合には、10mコースと13mコースの
平均最大迎え角がそれぞれ15度と12度であったということを中程度と表現した方が良いかも
しれません。実験のセットがスキッディングを使用してスピードを調節することができる中
斜面で行われたことを考えると、この調査でスキーヤーが多少のスキッドを使用していたこ
とは驚きに値しないでしょう。
LieuとMote の予測(Lieu, 1982; Lieu and Mote, 1985)(図 5)との比較では、スキーの
局所的な迎え角のパターンに多少のばらつきが見られましたが、これは選手が使用するスキ
ー用具の機械的・幾何学的特性のばらつきやスキーの動きの不規則さに起因するものと考え
られます。しかし、一般的には、スキー全体の迎え角が約15度以上になると、スキー全体に
沿った局所的な迎え角が高くなり、スキーの横滑りが支配的になっていることがわかりまし
た。この水準以下では、最後尾の局所的迎え角が減少し、スキー板前半部の局所的迎え角は
上昇したままでした。また、スキー全体の迎え角が8度に近づくにつれて、最後尾の局所的迎
え角が2~5度に達し、これらの測定点がカービングを開始したことを示しており、LieuとMote
の結果とよく一致しています。スキー全体の迎え角がさらに減少したのは、スキー板前半部
分の迎え角の減少に伴い、テール部分のカービング比が増加したことに関連しています。ス
キー全体の迎え角が約3度になった時点でスキーはカービングが発展した段階に達したが、局
所的なスキー板前半部の迎え角はわずかに上昇したままであり、この部分はまだ新雪を切削
加工していることを示しています。これは、Lieu と Mote の研究、および 辰野 (2009)、
Federolf (2005)、Federolf ら (2010b) のスキーショベルの機能に関する記述ともほぼ一致
しています。

 

スキーの軌道
外スキーはターン周期の大部分で高強度のターンを経験しており、ターンとターン間の切り
替えの前に始まっている場合もあった。スキーがカービングしていてエッジ角が比較的大き
い(θ>45度、図6参照)ターン周期の部分について。Howeの式(式1)は、式の単純さ
と、変わりやすいスキーと雪の相互作用が影響を与える複雑な変数を考慮すると、実際のス
キーターン半径を予測する上で驚くほどよく機能しました。このHoweのモデルと実測データの間に比較的強い関連性があることは、スキーの幾何学的特性、特にサイドカット半径が、
エッジ角の大きいカービングターン中の雪上でのスキーの挙動を決定する上でどれほど重要
であるかを示しているように思われます。しかし、小さいエッジ角では、Howeの式は実際の
ターン半径を大きく過小評価していました。このことは、以前の研究(Federolf, 2005;
Federolf et al, 2010a,b)で、Howeの方程式は小さいエッジ角ではより良い結果が得られ、
約45度以上のエッジ角では実際のターン半径を系統的に過小評価していたとの内容と対照的
です。今回の調査では、RHOWEがRSKIを過小評価しているように見えたのは、エッジ角が70度
以上になってからでした(13mコース)。この結果の対比の1つの可能性は、現在の調査が比
較的硬い雪の表面で行われたことであり、その影響で浸透の深さが制限されているため、ス
キーの変形は、雪に生成される溝の形状とスキーの軌道とより密接に一致しています。

 

それにもかかわらず、Howeの式1がスキーの軌道を捉えられない状況が2つありました。

まず、RSKIとRHOWEが大きく異なるのはターンとターンの切替部分で、RSKIが無限大に近づき、
RHOWEがRSCの限界に近づく、これはWimmer(2001)の知見と同様でした。スキーが小さいエッ
ジ角の場合に式1で予測されるターン半径よりもはるかに長いターン半径で滑走できること
は、スキーの物理的特性によってある程度説明できるかもしれません。ねじれ剛性は、スキ
ーのショベルとテールが雪との相互作用の間に発生するモーメントの下でねじれ、重要な役
割を果たしています。結果として生じるねじれ変形が、スキーの局所的なエッジ角をある閾
値以下に減少させるのに十分に大きい場合、スキーのその部分は雪から外れ、スキーを横滑
りさせ始めるか、または雪との接触を完全に失います。LeMaster(1999)は、エッジ角
が小さい場合、この現象はスキーの係合しているカービングセクションをサイドカットの少ない中間部分に減らし、スキーのターン半径を減少させる可能性があると説明しています。
もしこれが真実であれば、スキーの曲げ剛性とねじれ剛性の分布を含むスキーの物理的特性
は、低エッジ角でのカービングスキーの軌道に影響を与える重要なパラメータであることに
なります。
また、Howeの式1は、特に13mのコースで見られるRSKIの大きな断続的な変動をうまく捉えて
いませんでした(図7)。このようなスキー軌道の乱れが10mコースでは同程度には起こらな
ず、直感に反して10mコースでは横滑りが多かったことを考えると、何らかのメカニズムがカ
ービングの力学に関連している可能性を示唆していると思われます。 この結果は、他の研究
者もカービングターンを研究する際に、関連する可能性のある現象を観察していることを考
えると、特に印象的な結果です。特に、Federolf (2005)とFederolfら (2010b)は、大回転に
おけるカービングスキーの軌道の運動学的解析において、ターンの最初の部分で外側のスキ
ーが方向転換を減少させる時間を観測しているが、彼らは横方向のドリフトに起因している
と考えてます。Raschnerら(Raschner et al., 2001; Müller and Schwameder, 2003)はカー
ビングスキーで滑る選手と従来のスキーで滑る選手を比較して、カービング用具で滑るとき
の力-時間曲線が不規則であることを報告していますが、これも横滑りを繰り返したことが原
因であるという予想外の結果でした。
このような現象は、雪面の凹凸がスキーの軌道を妨げ、ドリフトや横滑りを引き起こしたと
考えられます。これまでの調査では、この可能性は除外できません。このような乱れは13mコ
ースで多く発生していることから、カービングとスキッディングとの雪の相互作用のメカニ
ズムの違いがこの乱れの発生を説明している可能性があると考えられます。そのような重要
な違いの一つが、溝の形成過程です。カービングの際には、スキーの最前点が雪表面から外
れるように、スキーは雪の中でわずかに傾くことになります(Lieu and Mote, 1985)。比較
的柔らかい先端部は、その後自由度が増し、ショベルが前後に曲がったり、ねじれたりして
振動して溝を掘り、スキーの残りの部分がそれに続くことになります。ターンの外側に向か
って先端が揺れるときに、雪面を捉えて食い込み、結果的にスキーヤーから離れるようにタ
ーンの外側に向けて溝の形成をしているのではないでしょうか。このような現象が起こる可
能性があることを示すいくつかの観測的証拠があります。この現象の一例を図8に示します
が、これは女子ワールドカップの大回転中に撮影された高速ビデオから生成された連続写真
です。
●以後
システムの構成を決めて製作にはいります。

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