信州のスキー場平年より1カ月遅れで雪が非常に少ないです。通年なら1月1,2日はスキー初すべりに行っているのですが、行かないで正月の電子工作をしてます。ここ3年スキー活動量計を12月1月で開発してきたのですが
スキーターン弧の正確な軌跡が測定できなくて、自分の滑りをみることができませんでした。cm級GPSが小型低価格になって入手容易になってきたので、スキーターンの測定解析に活用しようと考えて12月から基礎実験をしだした次第です。12月いっぱいで、F9PのRTKで信州のスキー場でも静的2cm精度で測位可能なことを確認しましたので、スキーターンも動的5cm精度で出来そうな目途がつきました。本格的にSkiTurnAnalyzerを検討することにしました。基準局は100kmに1個、正確なものがあれば精度が確保できることが分かったので自前では作らずに、松本市のJP_BIZSTATION様の基準局をお借りしてます。
※2023年4月追記 4年目となったスキーターン測定
IMUも追加して、スキーの角付け角とFALLLINEも測定できます。SkiTurnTracerという名称にして、スキー滑走の各種パラメータを詳細に眺めながら自分の滑りを評価する方法を検討するツールを開発してます。
※2022年6月追記 本記事から2年半経過して良い論文みつけました。
2005年ですが欧州スイスで秀逸な研究がされてました。やはり、3Dカメラでスキー滑走測定してますが、RTKがでてくると研究が一層すすむと思います。
※2021年2月19日追記
RTK開発始めて1年経過で、スキーターンの両足軌跡とズレ角の測定に目途がつきました。これからは、実用性を開発していきます。数cmレベルの軌跡差で自分の細かな滑り方を診断できます。アルペンターンよりテレマークターンのほうが複雑怪奇なので、解析していても面白いです。
1スキーユーザーとして、この技術は凄く役にたつ技術だと思います。
【信州MAKERSはコト作りとモノ作りのバランスをテーマとしてますので、RTK技術を追求するのではなく、「自分のスキーターンを解析して上達と楽しみにしたい」というコト作りを重視してます】
●ここ3年でのスキーセンシング知見
①スキー測定で一番有用だったのは気圧センサで、わずかな高度差でも見えるので、滑走状況が見える
➁通常のGPS(コード測位)では、細かなターンが見えない、大きなターンも弧が正確にでない
③IMUをみても、スキーの姿勢がよいのかどうか判定が難しい
④スキー板のしなりが測定できればいい
●世の中でのスキー研究調査
日本にはスキー学会があるので関係大学での研究がコンスタントに行われてます。スキーターンに限って検索してみました。
①昭和40年の名古屋大学理学部物理の大西先生の解説ですが、トータルした科学的考察が素晴らしいです。時代が進んでスキー技術も計測技術も進歩しても物理観点では、昔から変わってないので理論的な考察は役立ちます。
WEBであまり検索できないので、PDF添付しておきます。
「スキーの科学的研究」
知見1:スキーターンの軌跡だけでなくスキーにかかる6分力も必要
人間の重心運動によるモーメント測定が重要
知見2:スキーターンは横スベリが重要で、横滑りを考慮した解析が必要
知見3:基本は直滑降の測定から雪面との摩擦係数を求める
=>参照文献がたくさんあるのですが、55年もたつと国会図書館か大学図書館にでも行かないと調査できそうもありませんので、WEBにある論文を探しました。
➁「技術選スキー選手の大回り滑走動作に対する主観的評価と3次元解析による滑走動作パラメータとの関連性」2016年信州大学論文
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jskisciences/13/1/13_1/_article/-char/ja/
地元信州では、スキー産業が盛んなため、信州大学でもコンスタントにスキーの研究が行われているみたいです。
最新の研究からの知見
プロの選手のターンを3次元でカメラ測定して運動を解析した実験
特徴として、SAJの審判員の採点も測定と同時に行っていて、SAJの士判定基準と運動解析データの比較ができる点が素晴らしいです。
知見4:重心内傾角でターンを区分
1)内傾角ゼロが切替え点
2)内傾角最大がターンマキシム
1)2)がターン前半 2)->1)がターン後半と区別
知見5:高得点の選手ほどターンマキシムでの回転個弧半径が小さい
知見6:得点と求心加速度とは正の相関
知見7:高得点の選手ほど、ターンでの大きな求心力で小さなターン弧をえがいていることが分かった=>深いターン弧をえがくことがSAJの高得点
③「実滑走におけるスキーヤーの3次元姿勢計測とターンの運動解析に関する研究」
秋田大学も昔からスキーの研究をコンスタントに続けられてます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jskisciences/10/1/10_19/_article/-char/ja/
IMUをもちいて、3軸加速度、3軸ジャイロ、3軸地磁気センサを組み合わせて測定してます。秋田大学は以前からセンサフュージョンでフィルタ処理でIMUを活用する技術が得意みたいです、この論文では、9軸の小型ユニットを10個つかって、四肢の関節と重心に装着して、人の体の動きを詳細に測定できるようにしてあります。ログは、センサから有線でノートPCについないで、背負って滑走してます。やはり大量のセンサデータを処理するにはノートPCクラスの処理能力でないとできないということ理解してます。
知見8:地磁気センサでターンの軌跡を想定している
知見9:カービングターンとスキッディングターン(ズラシ)の違いが
四肢の動きで明確にみえている、ズラスために、微小な調整動作が見られる。
➁の信州大学の測定と③の秋田大学の測定を組み合わせると面白い結果が
でると思います。
●信州MAKERSでのスキーターン解析方法
1:ターンの良しあしは、ズラシがなく切れているターンと定義します。
つまり、ロスなく滑るので、ターン弧での速度が速いことが良いターンと考えます。
2:速度は斜度で決まりますので、高度計データと同期させてRTKのターン弧を測定して、その斜度での最高速度とターン速度と比較してみます。
3:ターン姿勢の情報は、IMUを配置して参照データとして検討
4:スキーにかかる6分力は、スキーにひずみゲージを貼ってどこまで
分力を測定できるか検討します。少なくとも自分が踏んだ量とひずみゲージの出力が一致しているデータがとれるようにしたいです。
●以後
RTKだけのデータをログするのではなく、高度計、IMU、ひずみゲージと多数のセンサ出力をログ表示解析できるシステムが必要なので、2020年シーズンでは全部できそうもないので、RTKと高度計をメインに制作してIMU値も参考程度に測定できればと思います。システム基板を作り出すと日数を食うので、雪が解けてしまって本末転倒なので、できるだけ簡単に測定できるようにノートPCを背負って有線でログできるように考えてます。
※その後スキーターンの軌跡と板の横滑り角の測定ができました。