Fusion360静的応力解析で6分力計のアイデア確認作業をしているのですが、3Dプリンタで造形することを前提として形状をいろいろいじってます。FDMの3Dプリンタで造形するにあたって、
●FDM3D造形で6分力計を造形する課題
材料と造形方法として下記の課題があると思います。
課題1:ハリの表裏で、曲げモーメントがかかった場合表裏の応力が引っ張り、圧縮で同値となっているか?
=>メッシュが表裏で不均一形状していた場合、応力伝達が偏って表裏の応力がばらばらになってしまうリスクはないのか?
課題2:バルク内がメッシュ構造になっているので、均等に応力を伝達できているか?
=>メッシュが対称な構造になっていればよいが寸法形状によっては、メッシュが非対称構造となって応力の伝達が不均等になる可能性がある
課題3:弾性領域内で負荷していても、メッシュの一部で応力集中が発生していて、そこだけ塑性変形が発生して、繰り返しで非線形な弾性変形特性をださないか?
=>メッシュの形状と分布も設計パラメータとしていれないときちんと応力測定できないのではないか?
※2018年に、3DPで6分力センサを作成して、MFT2018に出展しました。
6分力センサカテゴリーで、3DP製から、金属製までいろいろな多分力センサを試作しました。
ポイントは、カーボンフィラメントが多く入ったPLAを使うことです。通常のABS,PLAでは、全然ダメでした。
線形性はでるのですが、ドリフトが常時発生するので、荷重時にリセットをかけないといけません。
■心配するといくらで出てきますが、最終的にやってみる以外にないと思うのですが、事前に世の中では、積層造形で樹脂造形物の応力解析をどこまで研究されているか検索して、知見をもっていたほうが効率がいいので、調査してみました。金属の積層造形では、結構研究されているのですが、FDMの樹脂造形は、4本ほど資料が見つかりました。相当少ない事例だと分かりました。
そのなかでひずみゲージを貼りつけた実験結果がでている論文を勉強させていただきます。
【A】ヤング率を測定した論文(仙台高専様の論文抜粋)
http://www.sendai-nct.ac.jp/natori/library/0b135362d775ee0009c5ed0c1de366ad.pdf
■実験概要
3Dプリントした引っ張り試験片にひずみゲージを貼りつけてヤング率を測定した実験報告
実験水準:積層方向3方向x板厚さ3種x積層密度3水準
N=3本で引っ張り試験を弾性領域で行った結果
ヤング率の計算:応力=引っ張り試験機荷重/見かけの断面積
ヤング率=応力/ひずみゲージからのひずみ値
ひずみゲージを使ったヤング率の求め方の資料
結果1:全水準で、応力ーひずみ曲線は線形となった
結果2:上記図6のヤング率のグラフをみると
①造形方向TH:板厚、密度で±10%のヤング率がでてる
=>図7の断面写真で密度によらず一定に埋まっている
②造形方向TS:板厚が大でヤング率が低下している
=>板厚と正味の断面積の関係が板厚が大きいほど空隙が増えているのでみかけの応力とひずみゲージ値との関係が狂う。
<みかけの応力は一定だが、ひずみ値が大きくなるからヤング率が低下する>
③造形方向HS:板厚が大でヤング率が増加している
●気づいた点
①造形方向によって断面構造が大きくことなるため、力の伝達が変わるためひずみ値が変わる
②空隙がある構造でも表面の応力が荷重に比例している点は、
複雑な断面構造でも均等に応力が分布しているからだと推察される、25%荷重の引っ張り試験なので均等に分布できるため
【B】その他の資料
①圧縮ひずみ測定(群馬産業技術センター様)
http://www.tec-lab.pref.gunma.jp/research/report/files/H26/H26_06.pdf
簡易金型として3D造形物を使う用途が増えてますがその場合の金型の圧縮応力を測定解析した論文
キーエンスのIJ方式で造形しているので、FDMとは様子が異なる。
②構造設計の最適化の論文(神奈川大学様)
https://repository.exst.jaxa.jp/dspace/bitstream/a-is/643352/1/SA6000087031.pdf
これは、3Dプリントでトラス構造を作る場合の最適解を田口メソッドという実験計画法で最適化を図った論文で、あまり関係なかった
③光造形試験片での引っ張り試験(機械振興協会技術研究所様)
http://www.jspmi.or.jp/system/file/2/86/ksk_gh28_1.pdf
光造形で空隙無し状態で造形してある場合の材料特性
UV硬化樹脂なので、強度的に一般樹脂よりでない点が課題となっているため
●以後=>走りながら考えます
仙台高専様の論文が非常に参考になりました。
造形断面の形状を管理しながら6分力計を造形しないと訳がわからなくなるということが判りましたので、Simplify3DでInfill条件をふって断面形状をモニターしながら、さらに断面形状もFusion360で描いてシミュレーションをすることにします。
それと同時に、3Dプリンタで造形しながらひずみゲージ貼って測定しながら考えていきます。調査している時間で3D造形できてしまうので作って計ってみながらやれるのが3Dプリンタの良さです。
※その後2018年にカーボンフィラメントを使ったロードセルを造形して、6分力センサまで開発できました。カーボンフィラメントの高級なもの(CarbonFil)なら、ひずみゲージを貼っても、線形性がでて、力センシング可能です。
ただし、温度ドリフトなどゼロ点ドリフトは金属製よりは悪いですが、形状自由なロードセルが作成できます。MFT2018に出品して、注目をあつめました。しかし、精度がロードセルとしては、安物の中華ロードセルより悪いので実用面では、なかなか難しいです。
開発は非常に苦労したので、下記に多くの開発日記を記録にしてあります。
http://shinshu-makers.net/shinshu_makers/page/3/?s=6%E5%88%86%E5%8A%9B%E8%A8%882018